私たちの六年目
「じゃあ行こうか」
そう言って、椅子から立ち上がる菜穂さん。
だけど、次の瞬間。
彼女はガクッと、もう一度椅子に座り込んでしまった。
「ど、どうしたんですか? 菜穂さん」
急に立ったから、めまいでもしたのかな。
「あれ? 変だな……。立ち上がれない」
様子のおかしい菜穂さんのそばに慌てて走って行くと。
彼女はなんだか苦しそうで、目の焦点が合っていなかった。
「すみません。ちょっと失礼します」
そう言って僕は、彼女のおでこにそっと手を置いた。
「え……?」
嘘だろ? こんな。
「すげー熱い。
菜穂さん、熱が出てる」
「えっ、熱? 本当に?
でも私、風邪の症状なんて全然ないのに」
「だったら、余計に心配だ。
すぐに病院に行った方がいいです。
隣のビルのクリニック、12時半まで受け付けてくれるから、まだ間に合いますよ」
「わ、わかった……」
戸惑いつつも、僕に応じる彼女。
立ち上がるとどうしてもよろけてしまうから、とっさに僕が支えた。
「ごめんね。迷惑かけて……」
「僕は大丈夫だから。さ、行きましょう」
迷惑だなんて、とんでもない。
成り行きとはいえ、僕を頼って寄りかかってくれるんだから。
それは、やっぱり嬉しい……。
菜穂さんがこんなにつらそうなのに、僕は不謹慎にもそんなことを思っていた。
そう言って、椅子から立ち上がる菜穂さん。
だけど、次の瞬間。
彼女はガクッと、もう一度椅子に座り込んでしまった。
「ど、どうしたんですか? 菜穂さん」
急に立ったから、めまいでもしたのかな。
「あれ? 変だな……。立ち上がれない」
様子のおかしい菜穂さんのそばに慌てて走って行くと。
彼女はなんだか苦しそうで、目の焦点が合っていなかった。
「すみません。ちょっと失礼します」
そう言って僕は、彼女のおでこにそっと手を置いた。
「え……?」
嘘だろ? こんな。
「すげー熱い。
菜穂さん、熱が出てる」
「えっ、熱? 本当に?
でも私、風邪の症状なんて全然ないのに」
「だったら、余計に心配だ。
すぐに病院に行った方がいいです。
隣のビルのクリニック、12時半まで受け付けてくれるから、まだ間に合いますよ」
「わ、わかった……」
戸惑いつつも、僕に応じる彼女。
立ち上がるとどうしてもよろけてしまうから、とっさに僕が支えた。
「ごめんね。迷惑かけて……」
「僕は大丈夫だから。さ、行きましょう」
迷惑だなんて、とんでもない。
成り行きとはいえ、僕を頼って寄りかかってくれるんだから。
それは、やっぱり嬉しい……。
菜穂さんがこんなにつらそうなのに、僕は不謹慎にもそんなことを思っていた。