私たちの六年目



「全く……。何やってるんですか、菜穂さん」


僕は今、とある病院の病室にいる。


目の前にはベッドに横になって点滴を打たれている菜穂さんがいて、僕ははぁとため息をついた。


菜穂さんを近所のクリニックに連れて行くと、ケトン体の数値が異常に高く炎症反応が起きているので、すぐに大きな病院へ入院するように言われたのだ。


「無理し過ぎなんですよ。そのくせ食事を全然とってないんじゃ、身体が悲鳴を上げるのは当然でしょう?」


僕の言葉に、菜穂さんは「ごめん……」と申し訳なさそうに言った。


「しばらく入院だそうですから、ゆっくり休んでくださいね」


菜穂さんは、素直にコクンと頷いた。


ちなみに僕は、午後休を取った。


課長に連絡すると、菜穂さんに付いていてやって欲しいと頼まれたからだ。


「何かあったんですか?」


僕の問いに、何も答えない菜穂さん。


目を閉じて、静かにしているだけだ。


「ここ最近、菜穂さんは様子が変でしたけど。

もしかして、秀哉さんと何かあったんですか……?」


秀哉さんの名前聞くと、瞼がピクッと動く菜穂さん。


そうか。


やっぱり秀哉さんと何かあったんだ……。
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