私たちの六年目
「すごいね、崎田君は……」


「え、何がですか?」


「私のこと、何でもわかってしまうんだもの。

私が秀哉を好きなことにも、すぐに気づいたし。

私の体調が悪いのも、私より先に気づいてた」


「あぁ……。

まぁ僕の場合、菜穂さんのことをよく見てますからね。

普通の人だったら、わからないんじゃないかな」


菜穂さんって感情のアップダウンが少なくて、いつも同じようなテンションの人だから。


「別に察して欲しいわけじゃないんだけど。

自分がすごくつらい時に、全然気づいてもらえないってきついものだね……。

ましてや、長い付き合いの人達に……」


そう言って、遠い目をする菜穂さん。


「菜穂さん」


「ん?」


「今日は僕、こんなに菜穂さんのお世話をしているんだから。

その見返りに、話してくれませんか?

菜穂さんがつらかったこと、全部……」


「見返りって……。崎田君は、それで何か得するの?」


「しますよ。だって、菜穂さんの話が聞けるんだから」


こういう言い方でもしないと、彼女はきっと人に頼ったりは出来ないはずだから。


僕の言葉に、少し口角を上げると。


彼女は静かに話してくれた。


先週の金曜日に起こった出来事を……。
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