私たちの六年目



「お先に失礼します」


「崎田君、お疲れー」


今日の仕事も無事終わって、僕は自分の荷物を手にして事務所を後にした。


ただ今、時刻は19時。


今から病院に行けば、まだ面会時間には充分に間に合う。


会社から病院が近くて良かった。


着替えなど必要なものは、仕事の合間にアキ先輩が持って行ってくれるし。


僕も、毎日菜穂さんに会いに行けるから。


「あ、雨だ」


会社の玄関を出ると、雨がパラパラと降っていた。


昼間は、あんなに晴れていたのに。


仕方なく自分のカバンから折り畳み傘を取り出していると。


「崎田君」


背後から、聞き覚えのある声がした。


その声に振り返ると、柱の後ろからある人が姿を現した。


「秀哉さん……」


そう。


僕に声をかけたのは、秀哉さんだった。
< 108 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop