私たちの六年目
「どうしたんですか? こんなところで」


理由はわかっているけれど、あえて聞いてみた。


すると、彼はばつが悪そうに言った。


「菜穂を待ってる……」


菜穂、ね……。


気軽に呼び捨てにする感じが、なんだか憎らしい。


まるで、自分の所有物みたいに……。


「大学時代からの友達なのに、会社まで来ないと会えないんですか?」


わざといじわるに聞いてみれば、秀哉さんは悲しそうに頷いた。


「実は俺、菜穂にLINEをブロックされてるんだ。

グループLINEからも退会しちゃったし、誰も菜穂と連絡が取れなくて。

そんな菜穂に、郁未と守がワケがわからないって怒ってて。

このままじゃまずいって思ったから、部屋にも何度か行ってみたんだ。

だけど、いつ行っても菜穂は留守で。

だったら、職場に行くしかないと思って……」


へぇ……。


菜穂さんの部屋まで行ったんだ。


僕は彼女がどこに住んでいるのか知らないのに、この人は知っているんだね。


部屋に入ったこともあるのかな。


きっと、あるよね。


大学時代からの付き合いだし、好きな人なんだから……。


「崎田君、菜穂はまだ仕事中? 入れ違ってたらどうしようって、ちょっと心配なんだけど……」


思わず、大きなため息が漏れた。


この人って、本当に……。


「菜穂さんなら、ここにはいませんよ……」


「えっ、もう帰った?」


焦る秀哉さんに、僕は首を横に振った。


「菜穂さん。


今、入院してるから……」
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