私たちの六年目
俺は、あの日の菜穂を思い出していた。


『私を、二人の結婚式に呼ばないで』


菜穂は、涙に濡れた顔で俺にそう言った。


好きだった人の結婚式に行くのは、確かにつらい。


それは、わかる。


でも、もう二度と俺に会わないだなんて、それだけは受け入れられない。


どうにかして、それを阻止したくて。


だから何度も部屋に行ったし、菜穂の会社にまで足を運んだわけだけど。


それは、俺のひとりよがりでしかなかった。


崎田君の言う通り、俺はなんて自分勝手な人間なんだろう。


俺が梨華と一緒になると決まった時点で、菜穂を深く傷つけていたのに。


俺はその傷にさらにひどい痛みを与えようとしていたんだ……。


「菜穂のことは、あきらめよう」


「え……?」


「菜穂が俺達の結婚式に来ることは、絶対にないから」


俺の言葉に、梨華の目に一気に涙が溜まる。


それを見ていたら、俺も泣きそうになった。


菜穂は俺にとって、ものすごく大切な存在だった。


それを失うということは。


まるで片腕を失ったかのように、ひどくつらいことだった……。
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