私たちの六年目
恐る恐る振り返ると、驚愕の表情を浮かべた秀哉が私のことをじっと見ていた。


私が席を立った時、秀哉は席に座っていたはずなのに、どうしてここに?


あぁ、そうか。


私がトイレに長居してしまったから、その間に秀哉も席を立っていたんだ。


「まさか、こんなところで会えるなんて……」


そう言いながら、ゆっくりと私に近づいて来る秀哉。


私は、無意識に後ずさりしていた。


「菜穂は、誰と来てるの……?」


秀哉が尋ねるのも無理はない。


私がこんな格好でこんな場所にいるなんて、ほぼ皆無だから。


「えと……、私は崎田君と……」


私の言葉に、なぜか一瞬悲しそうな表情をする秀哉。


「そう……。崎田君と一緒なんだ。俺は……」


「知ってる」


「え……?」


「さっき、姿が見えたから」


「そ、そうか……」


どうしよう。


会話がぎこちない。


あれほど自然に話せる仲だったのに。


「早く戻った方が良くない?」


梨華のご両親と、梨華が待っているだろうし。


そう声をかけたのに、秀哉はなぜか動き出そうとしない。


仕方がないので、私が先に席に戻ることにした。


「じゃあ」と、その場を立ち去ろうとしたその時。


秀哉が、私の腕をガシッと掴んで引き止めた。
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