私たちの六年目
「ちょっ、何して……っ」


あまりにビックリして、秀哉を振り返った。


すると秀哉は、やけに苦しそうに私のことを見ていた。


「悪い……。こんなことして。

菜穂が、もう俺に会いたくないのはわかってる。

でも……、これだけはどうしても言わせて欲しくて」


どうしてもって。


一体、何を言おうとしているの?


「ごめん、菜穂」


ごめん?


ごめんって、どういうこと?


「何が……?」


思わず尋ねると。


「今までのこと、全部……。

俺、菜穂の気持ちに全然気づいていなくて。

それなのに、いつも梨華のことを菜穂に相談してた。

そのたびに菜穂を傷つけていたなんて。

本当に……、ごめん……」


そう言って秀哉は、私の腕を掴んだまま頭を下げた。


その姿を見ていたら、秀哉との5年間を思い出して、ひどく胸が苦しくなったけど。


私は首を横に振った。


「……もういいよ。

私がいけなかったのよ。

私が勇気がないばっかりに、秀哉に自分の気持ちを伝えられなくて……。

だから、これは自業自得。

自分で招いた結果なの」


早い段階で告白して、フラれておけば良かった。


そうしたら、こんなに苦しまずに済んだのに……。
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