私たちの六年目
そう問いかけると、梨華は俺の膝の上に置いていた手をスッと自分の方へと戻した。


「さっきも言ったでしょう?

早く秀哉と暮らしたいから」


梨華は床に視線を落としたまま、俺の顔は見ないで言った。


一緒に暮らしたいと言われるのは、悪い気はしない。


俺も、梨華のあの部屋に行くのはもう嫌だったし。


でも、何かがおかしいと感じるんだ。


どうしてなんだろう。


なんでこんなに不安になるんだ?


「それはそうと、いつご両親に話すの?」


「え……?」


「秀哉ったらその話になると、いつも返事がないんだもの」


「ご、ごめん……」


梨華のお腹の子のことを、両親にどう伝えていいか迷って。


なかなか踏み出せなかったんだ。


でも、一緒に暮らすなら、これ以上引き延ばすことは出来ない。


「わかった……。今週中に連絡するよ」


「本当に? 良かったー。

これで入籍出来るわね」


「入籍?」


なんで、ここでいきなり入籍に飛ぶんだ?


そんなに急ぐ必要なんて、特にないはずなのに。


やっぱり梨華は、何かをすごく急いでいる。


まるで、何かに追われるみたいに。


「ん……?」


追われる?


も、もしかして。


いや、梨華に限って、そんなはずはない。


でも、もしそうだとしたら……?


俺は、少しカマをかけてみることにした。
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