私たちの六年目
振り返るとそこには、細身のスーツに身を包んだ崎田君が、爽やかな笑顔で立っていた。


「奇遇ですね」


「崎田君、なんで?」


どうしてよりによって、今一番会いたくない崎田君がこんなところにいるの?


今週は担当現場が違っていたから、会わずに済んでホッとしていたのに。


「ちょっと、菜穂! この可愛い子は誰?」


そう言って、ベシッと私の肩を叩く郁未。


「初めまして。菜穂さんの会社の後輩で、崎田と言います」


「うわぁ、いいなあ。菜穂の会社、こんなイケメン君がいるのー? うらやましい」


うらやましいって……。


ほんと郁未は、アイドル系の可愛い男の子が好きだよね。


「ちょっと、崎田君」


「何ですか? 菜穂さん」


「まさかキミが居酒屋にひとりで来るわけないだろうし、連れがいるんでしょう? その人達のところに行かなくていいの?」


「大丈夫ですよ。僕、ひとりなんで」


にっこりと笑う崎田君に、ぎょっと目を見開いた。


「一緒に飲みに行きましょうって誘っても、うちの会社の先輩方は付き合いが悪いんで。

だから、ひとりで来ちゃいました」


「なっ」


「うそー、かわいそう! 

こんな可愛い子の誘いを断るなんて、菜穂の会社はひどい会社ね。

いいわ。あたし達と飲みましょ」


「はあ~?」


ちょっとー!


郁未ったら、何言ってんのー?
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