私たちの六年目
「もう、帰るね……」


秀哉は、明日も仕事だし。


そろそろ休ませてあげないと。


「じゃあね……」


そう言って、立ち上がったその時。


秀哉が突然、私の腕をガシッと掴んだ。


ビックリして秀哉を振り返ると、秀哉も驚いたような表情をしていた。


「どうしたの?」


「あ、いや……」


目を泳がせる秀哉。


だけど、まだ私の腕を強く掴んだままだ。


なんで秀哉が、こんなことをしているのかわからないけど。


私は秀哉の手にそっと手を置いて、ゆっくりと自分の腕から離した。


「おやすみ、秀哉」


次に会うのは、5人で集まる時にしよう。


それは、いつになるかわからないけど。


「またね」


出来る限りの笑顔でそう言って、立ち去ろうと玄関の方を向いた次の瞬間。


「菜穂!」


秀哉が再び私の腕を掴んだ。


その腕は強く引き寄せられ、気がつけばソファーに座らされていた。


私のすぐ目の前にある秀哉の顔。


私はそんな秀哉の整った顔を、じっと見ていた。


「秀哉……?」


一体どうしたの?


どうして何度も私を引き止めるの?


なんで……?
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