没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
***
大理石でできた壁と床、そして大きな窓は磨き上げられ指紋一つもない。
床には赤いカーペットが敷かれ、足音を立てる者は誰一人いない。
カルミア王国の首都ミミルにある王宮、その廊下をセイン・ミューアは迷うことなく歩いて行く。
窓から降り注ぐ太陽の光を受けて輝く銀髪のこの青年は、無表情にただ一点のみを見つめ歩いて行く。
そしてひときわ頑丈な扉の前に着くと、両脇に控えている騎士がお辞儀をする。
「見張り、ご苦労様です」
「「はっ、ありがとうございます!」」
騎士の返事に軽く頷くと、青年は中に声をかける。
「ラシェル殿下、セインです」
「はいれ」
部屋の主の許可を得た青年ーーーセインは中に入る。
「失礼いたします」
扉が完全に閉まったあと、セインは話し始める。
「これが先日参加した貴族の名簿です。こちらが参加した適齢の令嬢たちの名簿です」
「相変わらず仕事が早いことで」
あきれたと言わんばかりのセリフだが、顔には笑顔がある。
彼こそがこの国の第一王子、ラシェル・フォン・カルミアである。
薄茶色の髪と蒼い瞳、誰もがすれ違えば振り返ってしまう美しさと高貴さを兼ね備えた、未来のこの国の王である。
「調べたところ、適齢にもかかわらず参加していなかったのは一人のみでした」
「ふーん。誰?」
「レティシア子爵家の娘、シエル嬢です」
「レティシア子爵家と言えば没落貴族として有名だろ?金がなかったんじゃないのか」
「しかしシエル嬢の妹であるコーネリア嬢は参加しておられましたし、レティシア子爵夫妻もいました」
セインがそう伝えると、ラシェルは少し考え込む仕草を見せる。
「ああ、確かにコーネリアという娘はいた。この前が社交界デビューだったな。しかし姉の名前に全く聞き覚えがない」
「実は調べたところ・・・姉のシエル嬢は社交界デビューをしていないそうで。姿を見た者はほとんどおりません」
大理石でできた壁と床、そして大きな窓は磨き上げられ指紋一つもない。
床には赤いカーペットが敷かれ、足音を立てる者は誰一人いない。
カルミア王国の首都ミミルにある王宮、その廊下をセイン・ミューアは迷うことなく歩いて行く。
窓から降り注ぐ太陽の光を受けて輝く銀髪のこの青年は、無表情にただ一点のみを見つめ歩いて行く。
そしてひときわ頑丈な扉の前に着くと、両脇に控えている騎士がお辞儀をする。
「見張り、ご苦労様です」
「「はっ、ありがとうございます!」」
騎士の返事に軽く頷くと、青年は中に声をかける。
「ラシェル殿下、セインです」
「はいれ」
部屋の主の許可を得た青年ーーーセインは中に入る。
「失礼いたします」
扉が完全に閉まったあと、セインは話し始める。
「これが先日参加した貴族の名簿です。こちらが参加した適齢の令嬢たちの名簿です」
「相変わらず仕事が早いことで」
あきれたと言わんばかりのセリフだが、顔には笑顔がある。
彼こそがこの国の第一王子、ラシェル・フォン・カルミアである。
薄茶色の髪と蒼い瞳、誰もがすれ違えば振り返ってしまう美しさと高貴さを兼ね備えた、未来のこの国の王である。
「調べたところ、適齢にもかかわらず参加していなかったのは一人のみでした」
「ふーん。誰?」
「レティシア子爵家の娘、シエル嬢です」
「レティシア子爵家と言えば没落貴族として有名だろ?金がなかったんじゃないのか」
「しかしシエル嬢の妹であるコーネリア嬢は参加しておられましたし、レティシア子爵夫妻もいました」
セインがそう伝えると、ラシェルは少し考え込む仕草を見せる。
「ああ、確かにコーネリアという娘はいた。この前が社交界デビューだったな。しかし姉の名前に全く聞き覚えがない」
「実は調べたところ・・・姉のシエル嬢は社交界デビューをしていないそうで。姿を見た者はほとんどおりません」