恋の宝石ずっと輝かせて2

 山の奥深く、夏の暑さが嘘のように、ひんやりとした暗い洞窟に、巫女が一人足を踏み入れた。

 限られたものだけが入ることのできる空間。

 その巫女はまさにそういう権限を与えられていた。

 そこは山を司る神が居るべき場所。

 人も動物も祟りを恐れ滅多にやってこない。
 神秘に満ちた神聖な世界。

 だが、巫女は不穏を感じとる。何かがおかしい。

「ニシナ様? ニシナ様はいらっしゃいますか?」

 甲高い声が静かな洞窟でこだまする。

「ニシナ様!」

 巫女が叫んでも誰も応えない。

 洞窟の奥にたどり着いたとき、そこで見たものに巫女は目を見張った。

「一体何があったというの?」

 神聖な場所だというのに、ごつごつの岩が土砂崩れを起こしたように散らかっている。

 それは明らかに誰かの手によって荒らされていた。

 祀ってあった祠は岩をぶつけられてぐしゃりと押し潰されていた。

 その後ろから呻き声が微かに聞こえる。

「そこに誰かいるの? ニシナ様なの?」

 ごつごつとした岩の上を軽々と飛び越えて、巫女は祠の後方を覗く。

「あっ、セキ爺じゃないの」

 そこには体中傷だらけの体の大きな猪が横たわっていた。

 弱々しい声をしぼりだすようにその猪は巫女の名前を呼んだ。

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