恋の宝石ずっと輝かせて2
「ちょっと待ってくれない? 話が二転三転してるんだけど、私達にも分かるように話して。今、お父さんって言ったけど、花梨さんのお父さんはセキ爺なの?」

「はいそうです。私もかつては特別な力を持つイノシシでした。でも人間と結婚したために、自らその力を捨てたのです」

 花梨の事情を知って、仁とユキは驚きを隠せない。

「それじゃなぜ、赤石を盗まなければならなかったの?」

 ユキは一つ一つ謎を解こうとした。

「嫁ぎ先の八十鳩家は山神様の世話するために選ばれた家系ですが、歴史を遡れば、私のように特別な力を捨てたもの達が人間として生きる道を選んだのがきっかけでできた家系でした。私もその血を引くものと接しているうちに、徳一郎と恋に落ちてしまい結婚しました。そしてすぐに瞳を授かったのですが、家系を守るためには男児が必要で、その後中々二人目を授かれずに悩んでおりました。このままでは年を取って子供が産めなくなってしまう。つい焦って藁をも掴む状態で赤石の力を借りようとしたのです」

「だからか」

 その理由を聞いて仁は花梨の不妊の悩みの大きさに気がつく。

「父はそのことに気づいていながら、見てみぬふりをしてくれました。父にしても娘かわいさからそのような行動に出てしまったのです。男児が生まれたらすぐに返すつもりでいましたが、赤石を手にしたら急に怖くなってしまい、このままずっと手元に置いておくのも気が憚られ葛藤する毎日でした。何度も返しに行こうと思いながらずるずると時間だけが経っていったのです」

 八十鳩家を訪れた夜、庭先の祠の前で立っていた花梨の姿を仁は思い出していた。

 あの時、悩んだ末に返そうとして、取り出そうとしていたのかもしれない。

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