恋の宝石ずっと輝かせて2
「キイトはここを離れていたが、実はな、昨年のことなんじゃが、一度危機を感じた事があってのう、この山とどこか遠い世界の森が重なり合った事がある」

 感慨深くセキ爺は答えた。

「重なり合うってどういうこと?」

「我々が手にしたことない巨大な力を持つ、我々と同じような種族のものが遠い世界に居たということじゃ。そうしてここの山が一時的にその世界に組み込まれてしまい、見知らぬ輩が入り込むことになってしまった」

「その時、みんなはどうしたの?」

「暫く様子を見て息を潜めておった。ニシナ様は危機を感じるほどのことではないと判断されて、暫く眠りにつかれ、その間我々も死んだフリをするように、事が収まるのを待っていたんじゃ。多少の動物達は心乱されて遠い世界から来た輩に支配されてしまったが、その騒ぎもすぐに終結した。結局はこの山に不利益になることは起こらずじまいで、遠い世界の森は姿を消した」

 セキ爺の話にキイトははっと閃く。

「待って、それってもしかして大きな黒い猫が来たんじゃないの?」

「さあ、どうだったかのう。我々とはまた違う風貌だったらしいが、ニシナ様はそういえばそんなことを言っていたかもしれない」

「私なんとなく話が見えてきたような気がする。ニシナ様はあいつに誘拐されたんだ」

 急に怒りを露にしたキイトにセキ爺は訳がわからないと顔を覗き込んだ。

「セキ爺、私ニシナ様を助け出してくる」

 キイトは洞窟から出るや、セキ爺を木のたもとに座らせ、口笛を一吹きして近くにいる鳥たちを集めた。

「セキ爺に薬草と食料を運んでくるのよ」

 キイトの命令で鳥達は一斉に四方八方へと飛び立っていく。

 そしてキイトもいてもたってもいられないと走り出した。

「キイト、どこへ行くんじゃ」

「セキ爺の傷の手当ては鳥達が世話をしてくれるわ。セキ爺はしばらくここで休むといい。あとは私に任せて」

「キイト!」

 声を張り上げるだけで傷口がうずき、セキ爺は顔を歪ませたが、原因はそれだけでなくキイトが何かをしようとしていることに不安を隠せなかった。

 セキ爺は、山をすばしっこく駆け抜けていく一匹の狐の姿を、見えなくなるまで見つめていた。
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