恋の宝石ずっと輝かせて2

 ユキはため息を何度も吐きながら、家路に向かう。

 田舎の田園が広がり、辺りは緑で溢れていた。

 雑草が茂ったあぜ道を通りながらボーっとしているとき、自分の意思とは関係なく、いきなり身が軽くなって横にずれてジャンプをしていた。

「えっ?」

 それと同時に石がすーっと真横を過ぎ去り、目の前でそれは落下して跳ねていた。

 あのまま歩いていれば背中に当たっていたかもしれない。

 ユキは咄嗟に後ろを振り返るが、誰もおらず目をぱちくりする。

「一体なんだったの?」

 何も考えてなかったから、無意識に飛び跳ねたのかもしれない。

 訳がわからないまま首を傾げてユキは再び歩き出した。

 田んぼの青々とした苗に隠れ、その様子を見ていたものがいた。

「一体あの子何者よ。あの石をよけるなんて。後ろにも目があるの?」

 狐が身を縮めて隠れていた。
 キイトだった。

 ユキがどんどん離れていくと、辺りを確認してから再び巫女の姿になった。

 遠くを歩くユキの後姿を訝しげに見つめていた。




「ただいま」

 鍵を開け、誰も待っていない家でもユキは癖で声を掛けていた。

 父親は研究のため仕事が忙しく、度々重なる出張で家をよく留守にしていた。

 夏休みは特に自分の研究に没頭できると、長期間すでに海外へ出かけていた。

 ユキは一人暮らしにすっかり慣れてしまい、不平どころか、父親が居ない方が家事の仕事も減って楽だった。

 大学に進めば、どうせ父親とまた離れて暮らすことを思えば、この方が却ってせいせいする。

 鞄をその辺に放り投げ、ユキはキッチンに入って冷蔵庫の扉を開けた。

「夕飯は残り物でいいか」

 ここでもため息を一つ吐く。

 その後は冷房を利かせた居間でソファーに寝転がった。

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