俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
絶句した俺に、隼人くんは静かに続ける。
「……だから、赤の他人なのに自分を育ててくれた両親に恩返しをしたくて、お人好しな姉ちゃんはこの結婚の話を受けたんだよ」
はじめて出会ったとき、ホテルのロビーにいる鈴花が、青ざめた顔で胃のあたりを押さえていた姿が脳裏によみがえった。
あのとき彼女はきっと、ひとりで不安や心細さと戦っていたんだろう。
彼女がどれだけの覚悟であの場にいたのか。想像するだけで胸がいたむ。
それなのに、勝手な誤解をした俺に一方的に責められ貶されて……。
「そんな健気な鈴花さんを勝手に勘違いして罵倒するなんて、お前最悪だな」
激しい罪悪感にさいなまれた俺が黙り込むと、後ろで話を聞いていた穂積が追い打ちをかけるようにそう言った。
横目で穂積をにらむと、「失礼いたしました。副社長があんまり最低なので思わず素直な感想がもれてしまいました」とわざとらしい敬語で謝られ、余計にむっとした。
「あんたにとっちゃ、愛のない結婚をしてまで古臭い旅館を守ろうとする姉ちゃんは愚かで賤しく見えるのかもしれないけど、裕福な家庭に生まれたってだけで大企業の副社長を務められる苦労知らずの御曹司に、姉ちゃんを非難する資格なんてねぇからな!」
こちらを睨む怒りのこもった視線を受け止めながら、息を吐き出す。