俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~
 
「すまない。痛いか? 冷やした方が、いや病院に……」

取り乱す俺に、鈴花は首を横に振る。

「いえ、少し赤くなっただけなので、大丈夫です」

そう言って、彼女は細い腕を小さな手でそっとなでる。

感情的になっていたとはいえ、こんなに華奢な腕を乱暴に掴んでしまった自分が許せなくなる。
唇を噛んでいると、彼女の弟の隼人くんがため息を吐き出してこちらを見た。

「誤解してるみたいだから言っとくけど、姉ちゃんは金目当てで御曹司様にすり寄る外面だけ純情ぶった女とは違うからな」

隼人くんの言葉に驚いて彼の方へと向き直る。

「超絶過保護な親父のせいで、姉ちゃんはバイトも夜遊びもせずに学校が終わったらまっすぐに家に帰ってお稽古と家業の旅館の手伝いだけしてきて。二十三歳にもなって、恋をするどころか男と手をつないだこともないんだぞ」

隼人くんがそう言うと、鈴花は「ちょっと……!」と焦ったように悲鳴を上げた。

「隼人のバカ! なんでそんなこと言っちゃうのよ!」
「だって、姉ちゃんが尻軽女なんて誤解されてんのはムカつくだろ!」
「でも、恥ずかしいから知られたくなかったのに……っ!」


どうやら恋愛経験ゼロだということが、コンプレックスらしい。泣きそうな声で叫ぶ鈴花が可愛らしいと思ってしまう。


< 98 / 247 >

この作品をシェア

pagetop