アンドロイドに眼鏡は必要か?
培養液で顔を濡らしたハーキースはまるで、泣いているように見えた。

まもなくアラートが止まってピーッと平坦な電子音に変わり、ヴァレットの心拍が停止したことを告げた。

「私は博士を、殺しました……」

そのままハーキースは培養液の水たまりに崩れ落ちた。



アンドロイドに人間は殺せない。

この世界の常識だ。

当然、製造するときにそうプログラミングされる。

非常識なヴァレットだったが、そこだけは常識人だったらしい。
ハーキースは間接的とはいえ、ヴァレットを殺すという反アンドロイド的な行為をしたために、その回路には多大な負荷がかかっていた。

それはハーキースの活動を危うくするほどに。

「ハーキース、絶対助けるから。
そしてこれから、ふたりで一緒に暮らしていくの」
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