それでも君を
「とりあえず飲んでください」



目の前に差し出されたお水を受け取り、大人しく一口口に含んだ。



冷たい水がすーっと喉から胃に流れ込んでいくのが分かる。



先生はというと、横に腰掛けおもむろに私の手首を掴んでいた。



ここで診察されるのは嫌だが、店内で暴れて拒むわけにもいかず、黙って脈拍をとられておくことにする。



「……それで、どうしてこんなところを歩いているんです?」



脈をとり終え、異常がないことを確認したらしい先生が私の方へと向き直る。



言葉の感じからは、怒っている時の颯くんと同じような気配が伝わってきた。





「…助けてくれて、ありがと」


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