世界で一番、不器用な君へ


「うう、緊張で、心臓が」


こいつが単細胞でよかった。


「あ、そういえば私のハチマキ知らない?」


「ハチマキ…?」


そういえば、倒れる前に…


ポケットに手を入れる。左と、右両方にハチマキの感触。


「ああ、わり、俺が持ってるわ」


なんで俺…


左手を出そうとして、ふと、考える。


…まあ、ちょっとした出来心だ。深い意味は、そう、ない。


「ん」


右手から赤いハチマキを出して、渡す。


「ありがと」


シュルシュルと頭に巻くその隙に、白いうなじがのぞいて、俺はすぐに目をそらす。


…って、いやいや、一花だぞ?


うん、ない。こいつだけは、ない。


そう、多分暑さで、頭をやられただけだ。


俺は、心の中で自分にそう言い聞かせた。

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