クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
フルネームを言わなくていい相手だと絵梨花は判断したらしく、苗字だけで返した。
「いつも莉子から話は聞いてる…同期なんだってな!俺も渡部と同期で仲良いんだ」
「あっ、はい。彼から聞いてます」
「朝陽がさ、莉子ちゃんと付き合ってるとか見るまで信じられなかったけど、しょっちゅう、莉子ちゃんの話聞かされてた俺としては、お前の片思いが実ってホッとしたよ。絵梨花も俺から聞いてたから、2人が付き合うようになって嬉しいよなぁ」
「へー、どんな話を聞いたか教えてよ」
困った絵梨花が、渡部さんに助けを求めてくるのを見透かしていたとしか思えないアイコンタクトが目の前で繰り広げていた。
「朝陽が片思いしてる相手が莉子ちゃんだったって話が最初で、偶然、同じマンションだって知って浮かれてた話とか、仕事切り上げて莉子ちゃんに会うためにコンパに来たって話とか、莉子ちゃんの作るカレーが美味しかったって話とか、後、なんの話したっけ?」
この淡々とした茶番劇を渡部さんからバトンタッチされた絵梨花は、何か気がついた顔で楽しそうに話しだす。
「呼び出すメールがうざいぐらい何度もきてたって話とか、クールな男が嫉妬で不機嫌顔を隠せてなかったって話だよね」