昨日、彼を振りました。
背中に回った荒木さんの手が、私を抱きしめる。
あやすように背中をとんとんされて、少しずつ涙が止まっていく。

「落ち着いたか?」

こくんと一つ頷くと、荒木さんがゆっくりと離れた。

「こんな告白のされ方が嫌……ってわけじゃないよな」

「……ごめんなさい」

困ったように笑う荒木さんに黙って頷き、口を開くとまだ鼻づまりの声だった。

「荒木さんとはいままで通りの関係でいたいです。
この関係が変わるのは、嫌」

荒木さんは黙っている。
当然だろう、振られた上にこんなことを言われたら。

……きっともう、あの優しい関係には戻れない。

悲しくなってまたじわじわと涙が溜まってきたので慌てて拭う。
もうこれ以上、荒木さんを困らせたくない。

「わかった。
いま言ったことは忘れてくれ。
明日になったら元通りの関係だ」
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