バンパイア・ トラブル
その次の日。
おれは会社を休んだ。

風邪をひいてしまったのだ。

熱がある。

体温計で計ると三十八.五℃。
一応、病院で検査を受けたがインフルエンザではないようだ。


薬はもらったので、今日明日あたりで回復するだろう。


原因は一昨日、公園で夜中まで気絶していたせいだろうな。
教科書販売も実は花粉症じゃない学生が多かったのかも。


ちょっと前までそんな事で風邪なんて引かなかったはずなのに。
体力が落ちていることが何となくショックだ。


年齢を重ねるって怖いな。


おれはまた、くしゃみをして鼻をすする。


こういう時のひとり暮らしはきついと感じる時がある。


おれはゼリー飲料をストックしてあるのだが、足りねえ。
腹が減ってきた。

こういう時。

彼女がいたらとは思う。
都合がいいかな。


意外に思うかもしれないが、おれは今の家には女を連れ込んだ事がない。


今の家、と云った時点で何となくお分かりかもしれないが。


前に住んでいた場所では女を取っ替え引っ替えしていたものだから、とんでもない修羅場になった。

おれは職業を変え家を変え、ようやく今の場所に落ち着いたのでそれからは気をつけてる。


スマホが鳴った。


画面を見ると吉沢ひかるの名前が表示されている。
何かトラブルか?



「どうした、ひかるちゃん?」
『笠原さん、大丈夫ですか~?』



心配してわざわざ電話をくれたようだ。
優しい子だな。
まさに癒しの天使だ。





『笠原さんひとり暮らしですよね?何か食糧持って行きますよ』
「え、マジ?」




気づかいは嬉しいが吉沢ひかるは未成年だ。

なんといっても、おれの家に来たと知られたら大変だろうな。
女どもには家は秘密だし。



「気づかいありがとう。薬はあるし、大丈夫だよ」



おれは断ったのだが、ひかるは来るという。
住所はおれの補佐、小吹に訊いたそうだ。



くそ、あいつめ。



小吹は宅呑みしたことがあったから、おれの家を知っている。





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