夢物語
 ……誕生日に何を送ったとか。


 二人でどこに出かけただとか。


 正直、そんな話聞きたくもない。


 知りたくもない。


 なぜそんなこと、私の耳に入れる必要があるの?


 ただ私は、これまで通り平和に過ごしていたいだけ……。


 「高橋さん。一人二千円ジャストね」


 メンバーの声で、はっと我に返る。


 いつの間にか、集まりもお開きの時間が近付いていた。


 閉店時刻が近付くと、お店の店員が合計金額の書かれた伝票ホルダーを持参する。


 正確に割り算をすると、二千円をちょっと超えた金額になるようだけど、端数は切り捨てしてくれたようだ。


 「小銭は自分が出します」


 よっぽど年長でリッチなおじさまが参加している時以外は、こういう場合は西本くんが端数の小銭を負担してくれることが多い。


 飲み会の時の小銭負担のみならず、日頃の言動の節々に裕福な生活が窺える。


 こんなご時世にもかかわらず、家業は比較的順調で、十分な収入を得られているようだ。 
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