夢物語
 「今日勝てば……。今年もJ1残留が決まるね」


 そうだ、もはやそんな季節だった。


 でもこんなに早く残留が決まるとは。


 以前は最終節ギリギリまで降格の危機が残り、ハラハラすることが多かった。


 それより昔は、J1に昇格しても一年でJ2に降格するエレベータークラブで、何年にもわたってJ1でプレーできるなんて夢のような話だった。


 中澤が移籍してきて、その後古田ヤスが後を追うようにFC北海道にやってきてから……このチームは大きく変わったのは間違いない。


 今やJ1優勝や、アジアチャンピオンリーグ(ACL)進出可能な三位以内を随時狙えるチームになったのだから。


 降格を繰り返していた暗黒時代からすると、今は本当に夢のよう……。


 「今日は冴香さんと観戦する初の試合だから、絶対勝ちたいね」


 「うん」


 「そしたら不敗神話が続く限り、また一緒に来ようって話になるしね」


 暗黒時代からすると夢みたいなのは、西本くんと過ごすこの時間も同じ。


 昔、恋愛ではひどい目にあって、もう恋なんてしないと強く誓い、遠ざかっていた時代からすれば……。


 この時間は何より大切なもの。


 絶対に失いたくない。
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