夢物語
 それからキックオフの時間まで。


 私たちは同じパンフレットを読んだり、スマホで情報確認をしたり。


 「他会場はまだ始まってないの?」


 「今日はFC北海道も含め、14時開始が最も早いキックオフ時間だね」


 J1残留決定には、前後の順位にいる他チームの勝敗も関わってくるので、情報チェックが欠かせない。


 今日は絶え間なく、スマホチェックが必要になりそう……。


 「あ、やばい」


 「どうしたの?」


 誰かまずい人がこの辺りにいるのに気付いたのか!? などと一瞬不安になったのに、


 「バッテリー切れた」


 「えっ、もう!?」


 情報確認には頼みの綱である、西本くんのスマホはなんと試合前にバッテリー切れ。


 「しまった。充電忘れてた」


 待ち合わせ以前にバッテリー切れなんて起こされていたら、待ち合わせに支障が出ていたかもしれない。


 「バッテリーチャージャーとか持ってないの?」


 「うん、家の防災グッズと一緒に置いてある」


 「そっか……。仕方ないね」


 私はバッグの中から、タブレットを取り出し電源を入れた。


 「なんだ。持ってるなら最初から出してくれればよかったのに。タブレットのほうが画面大きくて見やすいし」


 「そうだったね」


 予想外のハプニングに微笑み合い、それからもタブレットを覗き込んで情報確認に勤しんだ。


 一つの画面を覗き込むため二人の距離は近付き、互いの熱を感じられるほど……。
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