夢物語
 「あ、ごめん」


 プログラムのページをめくる手が西本くんに触れてしまい、そっと引っ込める。


 その時顔が近づいていたため、唇が触れてしまいそうに感じられるくらいだった。


 「いいよ」


 二人きりの時は何も恥じらうことなく触れ合っているのだから、別に構わないよという意味だったのか。


 そっと微笑みながら、私の手にその手を重ねてきた。


 「……」


 誰かに見られたらどうしようという不安は、今はこうしていたいという願望にかき消された。


 少なくとも関係者で、わざわざスタジアムまで足を運ぶほどのFC北海道サポーターはいないはずだし。


 ……どうせ誰も見ていない。


 ここは二人だけの世界という思いが、私をそのままでいさせた。


 しばし手を触れ合い、微笑みながら……。
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