夢物語
***


 「もっと堂々と冴香さんと居たいのに」


 ……FC北海道の勝利を見届けた後、スタジアム近くの居酒屋で二人だけで祝杯を挙げて。


 今はホテルの一室。


 こういう関係になって、西本くんの部屋に誘われたこともあるけれど、それは絶対に無理。


 彼女を抱いている部屋の中で、到底そんな気分になれそうもない。


 そして、鉢合わせでもしたら……。


 他にも、彼女がいつしか西本くんのことを疑うようになって、部屋に隠しカメラでも仕掛けていたら!?


 そういうことを考えただけで、愛し合いたいという気持ちは萎えてしまう。


 ……昔は平気だったのに。


 昔、不倫していた頃は平然と相手の部屋に行き、奥さんと子供を作るようなことをしたであろうベッドの上で抱かれることで、優越感を満たしたりしていた。


 あの頃の若かった私とは違う。


 今は失うものの大きさが身に染みて、危険なことに燃えるよりも、リスクは避けたいという思いのほうが強い。
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