夢物語
 私のほうが八歳も年上なのに、大人の余裕なんて見せられない。


 いつの間にか主導権は全て、西本くんに握られている。


 いわゆる「ずるい男」に二股をかけられ、この関係はただの「浮気」にすぎないはずなのに。


 今だけのことにしなきゃならないのに、これからの二人を期待してしまう……。


 「冴香さん、好き……」


 体を重ねる時、初めての時のように震えてしまう。


 この年で少女ぶるのも似合わないし、もっと余裕を見せなければならないと思いつつも。


 私はきっと、心も体も何も成長しないまま、あの頃のまま止まっていたのだと思う。


 秘めた恋が騒動となり、相手の男に避けられるようになり自然消滅を悟ったあの日からずっと。


 遥かなる歳月を積み重ねたにもかかわらず。


 「眠り姫を目覚めさせてしまったかな」


 「!」


 西本くんは、私の考えていることを見透かすようなことが多々ある。


 現に今も。


 「こんなふうに目覚めてくれるのなら、目覚めさせてあげる。何度でも……」


 目覚めのキスは、物語とは違ってかなり強引。


 姫という柄ではないけれど、私はあの日から全てを眠らせていたのだと確信した。


 その間に西本くんは順調に年月を積み重ね、いつしか私を追い越して……。
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