夢物語
 「雪……?」


 夜も更けた頃、いっそう気温が下がり寒くなってきたため、暖房の温度を上げようとベッドを抜け出した時。


 遮光カーテンの隙間から見えた外の景色が、うっすらと白く染まっているのに気が付いた。


 今年の初雪だ。


 そういえば天気予報で、今夜あたり初雪になるかもしれないと言ってたような気がする。


 例年通りか、少し早いくらい?


 根雪になるのはまだまだ先だけど、ついに暗くて寒い冬の訪れかと思うと、重苦しい気分になる。


 改めて一年あっという間だったと感じる。


 今思えば、西本くんに対する想いに目覚めたのが今年の春頃?


 離婚の事実を知って、時間を重ねていくうちに感情を否定できなくなり、一線を越えたのは夏の終わり……。


 そして秋は逢瀬を繰り返し、季節はいよいよ冬へ……。


 初雪の部屋の冷たさが肌に突き刺さり、急いでベッドに戻った。


 ……初雪到来もまだ知らぬまま、穏やかな寝顔を見せている。


 寒さを増す季節に逆らうように、再び肌を重ね熱を求める……。
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