夢物語
***


 「えっ、ライン?」


 「……」


 「どういう風の吹き回し? あんなに禁止してたのに」


 不思議そうな顔を見せる優。


 それもそのはず、これまで散々ラインやFacebook、Twitterなど一切のSNSは禁止していたから。


 トラブル防止のためと言い聞かせていたけれど、本音はきっと浮気防止のため。


 私からの唯一の束縛。


 「だって……。周りの人に結構面倒かけてたでしょ? 仕事でも、サークルでも」


 「他のメンバーには、グループラインとかで一括送信できるのに、俺だけは個別にe-mailで送り直すのが面倒くさい……、ってぼやいてる奴も確かにいたけど」


 「だから、これ以上禁止令出し続けるのも時代にそぐわないと思って。やってもいいよ。ラインとか」


 ここにきて突然の解禁令を発したのは。


 ……優の出方を窺いたかったから。


 きっと大喜びで、ラインを始めるだろう。


 私との更なる交流のため?


 本当に二股をかけているなら、あの女と連絡が取りやすくするために。


 「いいよ別に。今さら面倒くさい」


 そう告げて再び視線をテレビに向けた。


 テレビではサッカーの日本代表の試合が放送されている。


 代表戦とはいえワールドカップの予選とか切羽詰まったものではない、交流カップ戦のようなもののため、真剣に応援しているわけではない。
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