夢物語
 三連休の中日。


 午後にいきなりメールが来て、今晩うちに来ない? との内容だった。


 私の予定も昼間に終わっていたし、夜は彼氏と一緒に過ごすことに異論はないのだけど。


 ……きっと、メンバーが集まらなかったとかで打ち上げが中止になったからだ。


 今までの私だったら、いきなりのお誘いに喜んで飛んで行ったはずなのに。


 今は穿った見方をせずにはいられない。


 昼間、優は大会に出場していて、入賞したようで賞品の缶ビールがテーブルの上に置かれていた。


 いつもならその後はサークル仲間と打ち上げに出向くはずが、私を呼び出したということは。


 何らかの事情で、打ち上げは流れたに違いない。


 せっかくのあの女と一緒に過ごせるチャンスなのに、残念なことで……。


 「志穂」


 不意に名前を呼ばれ、腕を掴まれる。


 いつしかサッカーの試合も終わっていて、テレビからはコマーシャルが流れてくるのみ。


 夜も更けてきて、これからは恋人同士の濃密な時間……。


 「やめて……」


 抱かれる時いつも、言葉とは裏腹に身体はもっと求めているはずなのに。


 この日は本当に違和感を覚えていた。


 素直に受け入れられないのは、今日の優はいつもとはどこか違うから。


 昼間何か、あの女と行き違いみたいなことがあったんだ。


 いつもより強引に抱くのも、それに対する苛立ちを私にぶつけているからなんだ……。
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