夢物語
 「……」


 抱かれた後、隣で深い眠りに落ちた優を一人残し、私はベッドを抜け出した。


 居間の電気はついたまま。


 優のスマホは、テーブルの上に置きっぱなしになっていた。


 前の結婚が終わりを迎えてから、優は気分転換と称して何度か引っ越しをしているため、家の中の家財道具も幾分少な目ですっきりとした室内。


 余り物を置かない主義。


 片付けが苦手だからと言ってた。


 優は眠りが深いので、少しくらいの物音はもちろん、ちょっとした地震があってもなかなか目を覚まさない。


 それはスマホをじっくり覗き見するのに好都合。


 私はソファーに座りスマホに手を伸ばし、メールの履歴を確認し始めた。


 こんなことしちゃいけないのは重々承知だし、優に見つかったら大変なことになるけれど、今はまさに緊急事態。


 白黒はっきりさせるためにも、高橋冴香との交流がどんなものであるか知っておく必要があった。


 スマホにロックをかけるような几帳面な人ではないので、すんなりメールチェックができた。


 受信箱を開くと、サークルの練習案内メールの他は、私と高橋冴香からのメールばかり!


 メールの数だけを比較すると、私よりも高橋冴香との交流がどう見ても多く、少々ムカついた。
< 225 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop