夢物語
 「志穂」


 今日も何事もなかったかのように抱かれる。


 他の女を手にしている人には触れられたくはないはずなのに。


 いざこうやって求められてしまうと、抗えない……。


 今この人が欲しいのは、他の誰でもないこの私……という事実にすがり、夢中になれる。


 ……悔しいけれど、優とは体の相性がいい。


 過去に勢いで体を重ねた男たちとは違う。


 二股の事実を知り、もう別れてやる! と昼間は心に誓っていても。


 夜また抱かれてしまうと、決心が遠のいてしまう。


 そして、ただ一つ願いが。


 今まで回り道はしてきたけれど、俺が一番必要なのは志穂だと言葉にして伝えてくれるだけで、裏切りでさえ何もかも許すことができそうな気がする……。
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