夢物語
 「とにかく、このまま我慢して終わるのは私が許さないよ。志穂の二十代の一番綺麗な時を、みすみす無駄にしてしまうのはあってはならないこと」


 今回の一件で姉はかなり優のことを怒っていて、別れるべきだとの意見。


 「もしサッカー関連のことで決断を迷ってるんなら、気にしなくていいからね。サッカーはサッカー。志穂たちのことは別問題だから」


 姉の夫はFC北海道のチームスタッフで、優もまたFC北海道にユニフォーム関係で出入りしている。


 二人が一緒に業務に携わることはないのだけど、私と後腐れのある別れ方をした場合、姉が黙っていないだろうし、そうなると義兄の優に対するイメージも悪くなるはず……。


 ……結局今日も迷ってばかりで、決断を出せない。


 姉にはもう少し時間がほしいと言いくるめておいた。


 そして優と会う予定の土曜日の夜が来る。


 雪がちらつき始め、もう辺りは冬の装いの週末。


 約束の時間は、午後十時半。


 九時半まで優はサークルで活動しているので、私と会うのはその後……。


 「今日はサークルのみんなと飲みに行かなかったの?」


 「明日親睦会で朝から集まるから、今日は早く帰ってみんな明日に備えるんだ」


 ……みんなの都合がつかないから、私と会うってわけね。


 私はいつしか、優先順位第二位。


 彼女というポジションにいるはずなのに。
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