夢物語
最寄り駅に到着目前だったところで行き先を変え、西本家へ。
十分くらい歩くとやがて、西本家の玄関先に植えられた桜の木が見えてきた。
確か、優くんが生まれた時に西本さんが亡き奥さんと一緒に植樹したとか。
それから十五年、木はかなり大きくなり、去年の満開の際もとても綺麗だった。
あと一か月後くらいの桜の季節には見事に咲き誇るはず。
西本家の正面にたどり着き、玄関前の自転車置き場を見ると、優くんの自転車が見当たらず……。
「あれ? 真由ちゃん?」
急に横のほうから声をかけられてびっくり。
「西本さん」
出張で不在のはずの西本さんが、 スコップを手にしてラフな服装で庭から現れた。
庭に残った根雪を砕いて、早く家庭菜園を始める下準備をしていたようだ。
「びっくりした。どうしたの今日は?」
「あ……。すみません突然。今日優くんは……」
「優? さっき出かけたよ。友達と遊びに行くようなこと言ってたけど。何か優に用事があった?」
「そうでしたか……。大したことじゃなくて。そう、CD! CDを優くんに貸す約束をしていたので、渡したいと思って」
どうやら優くんは西本さんに、これから私と会う予定なことを告げていなかったようだ。
思春期の息子と男親の間柄ゆえの恥ずかしさのようなものがあるのかと思い、私もその話はしなかった。
今日直接会って手渡す予定だったCDアルバムを、家を訪れた口実としてとっさに用いた。
十分くらい歩くとやがて、西本家の玄関先に植えられた桜の木が見えてきた。
確か、優くんが生まれた時に西本さんが亡き奥さんと一緒に植樹したとか。
それから十五年、木はかなり大きくなり、去年の満開の際もとても綺麗だった。
あと一か月後くらいの桜の季節には見事に咲き誇るはず。
西本家の正面にたどり着き、玄関前の自転車置き場を見ると、優くんの自転車が見当たらず……。
「あれ? 真由ちゃん?」
急に横のほうから声をかけられてびっくり。
「西本さん」
出張で不在のはずの西本さんが、 スコップを手にしてラフな服装で庭から現れた。
庭に残った根雪を砕いて、早く家庭菜園を始める下準備をしていたようだ。
「びっくりした。どうしたの今日は?」
「あ……。すみません突然。今日優くんは……」
「優? さっき出かけたよ。友達と遊びに行くようなこと言ってたけど。何か優に用事があった?」
「そうでしたか……。大したことじゃなくて。そう、CD! CDを優くんに貸す約束をしていたので、渡したいと思って」
どうやら優くんは西本さんに、これから私と会う予定なことを告げていなかったようだ。
思春期の息子と男親の間柄ゆえの恥ずかしさのようなものがあるのかと思い、私もその話はしなかった。
今日直接会って手渡す予定だったCDアルバムを、家を訪れた口実としてとっさに用いた。