夢物語
 「『LOOSE』……。このB'zのアルバムを、優に渡しておけばいいんだね?」


 「はい。発売から時間も経ってるし、私は録音したものを持ってるので、ゆっくり聴いていて構わないとお伝えください」


 玄関先で西本さんにCDを手渡し、そのまま駅に引き返そうとしたのだけど、


 「これから用事ある? せっかくここまで来てくれたのに、優とは入れ違いになってしまい申し訳ないから、お茶飲んでいかない?」


 「え。でも……」


 時計にちらっと目をやる。


 「家(自宅)から歩いて来たんでしょ? 車で送ってあげるから」


 「これから私、都心まで出かけて買い物する予定でしたので……。それなら駅までお願い できますか」


 「了解。出張中の荷物で車の中散らかってるから、片付ける間、居間でお茶飲みながら休んでいて」


 西本さんは出張先の天候が悪かったため、一日早く切り上げて札幌に戻ってきたらしい。


 札幌はこんなに天気がいいのに、北海道は広いため地方とは全く天候が異なったりもする。


 結局家に上がり、西本さんが用意してくれた緑茶を飲みながらソファーに座って待っていた。


 家庭教師は主に私の家に優くんが通ってくるスタイルだったため、私が西本家を訪れるのは実は数えるくらいしかない。


 優くんのお母さんが亡くなった際と、後は時々開催されるバーベキューなどくらい。


 棚の上には家族三人でどこかの海で撮影した記念写真が今でも飾られていて、奥の和室に仏壇が見える。


 「その写真、摩周湖(ましゅうこ)に家族旅行した際のものなんだ」


 西本さんが戻ってきた。
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