夢物語
 「五年前のものなのに、もう遠い昔の思い出のようだね」


 そう言いながら苦笑しつつ、写真立てを伏せていた。


 「改めて真由ちゃん、新社会人おめでとう」


 「まだ実感ないですね」


 それからしばらくは、雑談。


 優くんの家庭教師時代の苦労話や、私の大学での話、これからの就職先での話なども改めて。


 それから西本さんの会社の話になった。


 ユニフォームなどの背面に背番号や選手名をプリントしたり、ゼッケンを作る仕事だとは知っていたけれど、取引先との話などをいつもより詳しく。


 「いずれ北海道にもプロ野球やサッカーチームができれば、うちの会社ももっと規模拡大できそうなんだけどね」


 今は小学校の運動会に使うゼッケンや、中高生が部活動などで着用するユニフォームのプリントなどが主な業務らしいけど、もしもプロチームが上陸すれば仕事が何倍にも増えると予想される。


 そういえば優くんから聞いて、もうすぐサッカーチームが北海道に移転してくるらしいなどとは知っていた。


 優くんは元々サッカー好きなのに加え、家業のつながりなどもあってそういった情報には詳しいのかなと思った。


 「ところで、真由ちゃん」


 突然西本さんが深刻そうな口調となった。


 「優の家庭教師が終わったのを機に、言うべきか言わないでおくべきか、ずっと迷っていたんだけど……」


 「何をですか」


 「……真由ちゃんは、付き合っている人はいないんだよね」


 「はい」


 「驚かないで聞いてくれる?」


 「何を……でしょうか?」


 「真由ちゃん、好きだ」


 「えっ」


 それはまるで青天の霹靂。


 西本さんが……、私を!?
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