夢物語
 「優に勉強を教える姿をいつも見ていて、いつしか心惹かれていた。もう一度家庭を持つのも悪くないかもって思うことができたのも、真由ちゃんのおかげだ」


 「私……」


 「けじめとして、三回忌は待とうと思った。そして優の受験が終わるまで待とうとも」


 「……」


 予想外の展開に、私は完全に言葉を失ってしまった。


 年の差もあったし、あくまで優くんのお父さんとしてしか見ていなかったのに、こうして好きだなんて言われてしまうと……。


 「真由ちゃん、僕とのことを前向きに考えてほしい」


 「西本さん……」


 「迷惑だったかな? もし真由ちゃんが了承してくれれば、僕はこのまま……」


 ……それからは急な展開だった。


 突然の告白。


 そして手を握られ、抱き寄せられ、そのまま……。


 「西本さん、……!」


 唇を重ねていた。


 はじめてのキスは甘く濃厚で、そして……。


 流れで強く抱きしめ合い、それはやがて……。


 「だめ、やめて!」


 胸のボタンが一つ一つ外され、下着があらわになった時、ようやく恥じらいの言葉が出た。


 でも言葉とは裏腹に、このまま一線を越えてしまうことを私は心から望んでいた。


 本当に嫌だったら、突き飛ばしてでもここから逃げたはず。


 西本さんは決して強引なことをしたわけではない。


 むしろ私も……。


 同じ部屋ではないとはいえ、仏壇や遺影のある家で抱かれることに対しては抵抗があったものの、西本さんが私を必要とし、求めてくることに対して心から満たされていた。


 私はいつの頃からか……、西本さんが好きだった?


 優くんに丁寧に接していたのも、実は西本さんに褒めてほしかったから?


 西本さんのそばにいる口実として利用していたのかも……?
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