夢物語
 順番は明らかに逆だったけれど、その一件を機に私は西本さんと正式に付き合うこととなった。


 最初は両親に隠していたとはいえ、次第にごまかし続けることに限界を感じ、ある日二人で両親に交際を報告することにした。


 ……西本さんは父に殴られた。


 家族ぐるみの付き合いをしてきたのは、こういう結果になることを期待していたからではないと。


 長年にわたる先輩後輩としての交流に亀裂が入る危機だったところ、母の仲裁もあり、やがて父は少しずつ態度を軟化させた。


 母は私たちの年齢差や、三回忌は過ぎたとはいえ優くんの亡き母を慕う気持ちを考慮して最初は難色を示したものの、もはや私たちを止めることはできないと父を諭した。


 こんなことになったとはいえ、西本さんを大事な後輩と思う気持ちに変わりはないことを悟り、やがて交際を認めてくれた。


 そして私は堂々と西本さんと付き合うことができるようになったのだけど、最大の問題が残ったままだった。


 「え? 優くんが?」


 「こんなこと真由に相談すべきかどうか迷ったんだけど……」


 お盆休み、二人の休暇を合わせて函館に一泊旅行に来ていた。


 時期的に宿泊代金は高額で、私一人だったら躊躇してしまうような金額だったけれど、西本さんがそれでも一緒に出掛けられるのなら構わないと支払ってくれた。


 高級な温泉旅館で入浴後に部屋食を楽しみ、窓から庭の夕刻の景色を眺めていた時のことだった。


 西本さんが優くんのことで何か困っているにもかかわらず、私に告げるのをためらっているようだ。
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