夢物語
……それからまたいくつもの季節が過ぎ去った。


 私は何度か職場を変えつつも、大学卒業後一貫して図書館司書の仕事を続けている。


 すでに中堅からベテランと呼ばれる年代に差し掛かってきた。


 西本さんとは相変わらずのパートナー関係を継続中。


 ……未だに籍を入れていない。


 古風な言い方をすれば……私は「内縁の妻」。


 「いい加減白黒はっきりさせたらどうなんだ。私たちだっていつまでも生きていられるわけじゃない。せめて我々が元気なうちに、けじめをつけてくれないか」


 すでに高齢となった両親に、またしても説得された。


 「西本さんだって、年齢よりはずっと若く見えるけど、お父さんと三歳しか違わないんだし、万が一のことがあってもおかしくない年齢なのよ。今のうちに先のことを決めておかないと、困るのは真由、あなたなのよ」


 両親は重ね重ね、西本さんと籍を入れて正式な夫婦になるように勧める。


 西本さんも私との結婚を切望している。


 なのに私は長年それを拒み続けていた。


 理由は……、優くんへの罪悪感ゆえ?


 結婚して子供ができたりしたら、いずれ相続のことなどで優くんと揉める可能性があり、それを避けたいという思いもあった。
< 295 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop