夢物語
 複雑な思いを抱えたまま一歩を踏み出せずにいるうちに年月ばかりが流れ、私ももう若いとは言えない年代に差し掛かった。


 「真由にとってはまだ相続とか、ピンと来ないかもしれないけど、西本はお前より二十二歳年上なんだ。そのことをじっくり考えた方がいい」


 二十二歳という年齢差も、若い頃はほとんど気にならないどころか、はるかに年上な恋人の存在が刺激的で頼もしかった。


 一生そのまま離れることはないとすら錯覚されるほどに……。


 でも実際問題、平均寿命からしても、私よりかなり先に西本さんはこの世を去ることは間違いない。


 その時残された私は……?


 優くんと遺産相続で争う運命なの?


 いや、入籍していない今の私には、何の権利もないに等しい。


 優くんは当然私を追い出し、全てを失うことになるはず……。


 そう、あれから何年も経っているにもかかわらず、まだ優くんは私を許していない。


 たまに顔を合わせると形式的な挨拶程度はしてくるものの、それ以外は完全無視。


 別れた妻に「家政婦だ」と紹介したように、決して私を認めようとはしない。


 ……優くんの結婚生活は、数年しか続かなかった。


 あんなに幸せそうだったのに、いざ結婚生活を始めてみるとなかなか付き合っていた頃のようにはいかなかったと聞く。


 そしてまた独りに戻り、かつてのような女の子の存在が絶えない日々を再開させた後、ようやくその中の一人を彼女に定めたようだ。


 一度だけ見たことがあるけれど、若くて外見は申し分のない子だったけど……なんとなく優くんとは合わないような気がしていた。
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