夢物語
 意を決して玄関の鍵を開けた。


 ここは西本さんの家、私は籍は入れていないとはいえパートナーとして長らく一緒に暮らしているのだから、遠慮することはないはずなのに、優くんが来ているとなれば心拍数が上がる。


 また家政婦呼ばわりされるなど、冷たい仕草に苦しめられるのだろうか……。


 「あ、真由。いいところに帰ってきた」


 リビングで何やら優くんと話をしていた西本さんが、私を呼んだ。


 西本さんはソファーに座り、優くんは窓辺に立っている。


 「お茶用意してきます」


 二人とも飲み物も用意せず話をしているのに気付いて、台所へ向かった。


 逃げるように。


 何の話をしているのだろう。


 ろくに実家に寄り付かない優くんが敢えて話をしに来たということは……。


 再婚?


 それくらいしか思い付かない。


 あの、若くて見た目だけの女の子と?


 私には反対する資格なんてないのに、優くんの選択を受け入れられずにいる。


 そんな話、聞きたくない。


 「……」


 でも逃げることもできないまま、お茶の用意をして居間に戻った。


 もう現実を受け入れるしかないと、意を決して。
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