夢物語
 気持ちを落ち着かせて、奥さんからの怒鳴り込み電話に至るまでの仮定を頭の中で時系列順に並べてみた。


 今日の昼間、保険の契約書を持ったTが、奥さんの元を訪れて。


 雑談中に余計なリップサービス……つまり私たちが不適切な関係を持っているらしいと密告。


 それに逆上して、奥さんはTの帰宅後、怒りの電話……。


 全ては今日一日の出来事。


 Tの密告後、すぐに電話がかかってきたということは、興信所に依頼をしているとは考えにくい。


 つまり、決定的な証拠を奥さんが握っているわけではないのだろう。


 「とはいえ、Tが以前から嗅ぎまわっていた可能性はある。いずれにしてもしばらくは用心しなくては」


 「分かりました」


 奥さんに嗅ぎつけられた今、密会を強行するのは、飛んで火にいる夏の虫のごとき自殺行為。


 当面は我慢を強いられることとなった。
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