夢物語
 「……次の練習の際、Tにはっきり言ってやるか」


 その日の夜、彼に電話をかけた。


 盗聴を恐れて、私は家を出て近所の神社の境内からこっそり発信。


 室内にいた彼もまた、盗聴器を仕掛けられているかもしれないと恐れていたため部屋を出て、近所のコンビニの駐車場まで出向いてかけ直してきた。


 会いたい、そして抱きしめられたいけれども、現場を抑えられたらアウトなので、今は我慢。


 「まさか代表者夫人にまで電話が行くとは」


 夕方の電話の件を、真っ先に告げた。


 「俺も、話し合いに応じるふりして、妻からあれこれ聞き出した。Tの奴、俺たちの関係を決定づける証拠として、プリクラを持参したらしい」


 「プリクラ?」


 何のプリクラだろう。


 私たちは一度も、二人きりのプリクラなんて取ったことがない。


 プリクラといえば……、昨年末の忘年会の帰り、他の女の子数名と一緒に一度だけ……。


 「どうやらご丁寧に、俺たちの部分だけ切り取ったものを、
はわざわざ持ってきたみたいだよ。他の子たちの部分は切り取られて、まるで俺たちのツーショットのごとく」


 「そこまで悪質な」


 私の上達を妬んでいたとはいえ、サークル仲間を陥れるようなことがどうしてできるのか。


 信じがたい事実だった。
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