異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
「今日は1日休みを取ったんだ」

「はい、あ、珍しいですね。お休みなんて初めてじゃないですか?」

提督さんは私がここに来てから、ずっと働きっぱなしだ。
最高司令官に基本休みはなく、いついかなる時もブリッジにいる、というのがお仕事。
ずーっとそうやって代々やってきたんだって。

「ああ、休みをとるなんてもう……3年ぶりか……」

「3年働きっぱなしですか!?死にますよ!」

ワーカホリックか!?
過労死するよ!!

「はは。まぁな、戦艦島の提督なんてのは皆寿命が短いな。百瀬大将もまだ50前だったし……」

もう!笑い事じゃないよ!?

「ダメですよ!!適度に休みは取りましょう!ストレスが一番健康に悪いんですよ!」

と、私は珍しくプリプリと怒った。
当たり前のように死を語る提督さんに少し腹が立ったのだ。
那由多民や他の船の人達が、私が来た世界の人間より寿命が短いのは知っている。
でもだからと言って、諦めたように言って欲しくない。

「提督さんには長生きして貰いたいです」

うん、そうだそうだ。

「ずっと一緒にいて欲しいから……」

あれ?ちょっと………?

「私より先に死んだりしないで下さいね」

………………………。
なんと言うことでしょう。
甘くて恐ろしい言葉が、すらすらと私の口から溢れるではないですか。
えっと、これ、何だ?
めちゃくちゃ恥ずかしい!
出来ることなら今すぐここから走って逃げて、甲板から海へ飛び込みたい……そんな気分。
私は一歩後退りすると、提督さんを見上げた。
こんなベッタベタな言葉を言われてさぞ、呆れてるだろうなと様子を伺うと。

「君を置いて死ぬものか!!」

そう叫んで私に詰め寄り、頭を抱え込むと、ぎゅうぎゅうと厚い胸板に押し付けた。
提督さん……真正面から受け取るタイプだったんだね……。
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