BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

「太陽は、月になったのかなぁ」


『月』が言えなくて『ちゅき』になっていて可愛らしい。


「……ん? 一花。太陽は見えない場所に隠れただけで、月になったわけじゃないよ?」


男の子が優しく諭している。


「ふーん。太陽さん、かくれんぼしてるだけなんだ」


女の子はどうやら、暗くなると太陽は月に変わり、朝になるとまた月が太陽に戻ると言いたかったらしい。


「子どもの発想って、すごいね」

「……ああ、そうだな」


ぼんやりと答えた藤川は夕陽の残骸を見つめたまま動かない。



「太陽が月に変わる、か。……そうなれたらいいんだけどな」


何やら意味のわからないことを言い始め、私は首を傾ける。


藤川の横顔が切なく寂しげに見えて、守ってあげたいという妙な気分が再び湧いてきた。



(さっきから……どうしたんだろう、私)


藤川は人を苛める、最低な部類の人間で。

女は皆、自分が声をかければ誰でも振り向いてくれると思っていそうな自信家な男なのに。


私は彼の儚い横顔がいつまでも気にかかって仕方なかった。


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