BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
「藤川君って今、彼女いないんだよね? どんな子が好きなの?」
「そうだなー。清楚で優しくて従順な子がいいかな」
あからさまに避けられ、胃の辺りがムカムカしてくる。
何が清楚で優しくて従順な子が好き、よ。
私とはまるで正反対。
本当に腹が立つ。
しかも私と話すときとは違い、柔らかな喋り方をしていて、さらにイライラが増していく。
「おー、七瀬。どうした?」
教室の前で柱に爪を食い込ませる私へ、咲都が声をかけてきた。
「咲、都」
「えっ……、おい、目が赤いぞ、具合でも悪いのか?」
咲都が心配そうに顔を覗き込んできて、ようやく気づく。
なぜか目の表面に、うっすらと涙が浮かんでいることに。
廊下へ私を連れ出した咲都は、落ち着かせるように背中を撫でてくれる。
「どうしたんだよ。いつもの七瀬らしくないな。なんか……、か弱くなってる」
眉を下げ小さく笑った過保護な咲都は、昔から私のことを妹みたいに扱う。
だから、普段なら安心して何でも打ち明けられた。
……だけど。