BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
この複雑な気持ちは、まだ誰にも言えない。
言える状態じゃない。
まさか私が、藤川のことを気になり始めているなんて……。
「なあ、七瀬。お前って、もしかして──」
普段は鈍いはずの咲都は、何かに気づいてしまったようだ。
「咲都。これ、美愛から」
私は彼の声を遮るように、ミントのタブレットを手渡す。
シャラ……と音がして咲都の大きな手の中に収まった。
「あ……、ああ、サンキュ」
「そんなに大事なの? ソレ」
「ん。ちょうど今、禁断症状に陥ってた」
真顔で言う彼の場合、冗談なのか本気なのかわからないところがある。
「ほら。一粒やるよ」
咲都は指で摘まんだ白いタブレットを、私の唇に押しつけてくる。
無意識に唇が開き、私の口内へ滑り込む。
スッとする清涼感を舌に感じたとき、教室から出てきた人と目が合った。
「…………」
全く表情のない藤川が、私達のことをじっと見ていた。