BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

この複雑な気持ちは、まだ誰にも言えない。

言える状態じゃない。



まさか私が、藤川のことを気になり始めているなんて……。




「なあ、七瀬。お前って、もしかして──」


普段は鈍いはずの咲都は、何かに気づいてしまったようだ。



「咲都。これ、美愛から」


私は彼の声を遮るように、ミントのタブレットを手渡す。

シャラ……と音がして咲都の大きな手の中に収まった。


「あ……、ああ、サンキュ」

「そんなに大事なの? ソレ」

「ん。ちょうど今、禁断症状に陥ってた」


真顔で言う彼の場合、冗談なのか本気なのかわからないところがある。


「ほら。一粒やるよ」


咲都は指で摘まんだ白いタブレットを、私の唇に押しつけてくる。

無意識に唇が開き、私の口内へ滑り込む。

スッとする清涼感を舌に感じたとき、教室から出てきた人と目が合った。


「…………」


全く表情のない藤川が、私達のことをじっと見ていた。

< 55 / 147 >

この作品をシェア

pagetop